日本のイワナ類は、河川の上流の限られた生息域に分布しています。近年、これらの生息域が狭められ、遺伝集団が大きく減少しています。七飯淡水実験所では、日本各地のイワナ類を集め、それらの繁殖生理学的な研究を行いました。この研究の成果により、人工的な増殖法が確立され、日本各地でイワナの集団を維持できるようになりました。
魚類の増養殖においては、オスメス一方の性に有用性が高い場合が多くあります。例えば、ヒラメではメスの成長が早く商品価値が高く、サクラマスではオスの多くが河川に残留します。このような場合、一方の性のみの集団を作ったほうが養殖・増殖において効率がよいということになります。七飯淡水実験所では、全メス、全オス集団、さらにはクローン集団や不妊化集団を作り出す技術を確立し、水産増養殖に新たな展開をもたらしました。
魚が成熟して行く過程で、卵に貯えられる蛋白質は肝臓で合成され血液を介して卵巣へ運ばれます。このため、血液を調べることで、いつ頃から卵が作られ始めるのかが明らかになります。一方、卵を作らないオスではこの蛋白質は作られません。従って、イトウ等の成熟までに時間がかかる魚種では、血液を調べればいつ頃から生殖が始まるのか分かり、また、オスメスの区別も可能と考えられます。この研究の過程で、オスの魚でも卵の蛋白質が作られることが明らかにされ、環境ホルモンの生物学的な検出の方法が確立されました。
イトウは、環境庁のレッドデータブックで絶滅危惧種として記載されています。木村式養魚水槽をはじめとする様々な飼育器具を開発し、このイトウの人工的な増殖技術を確立し、さらには養殖品種としてアルビノ(白子)形質を固定しました。
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